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この街のはずれには、深く覆われた森に囲まれて中世の様式の古びた城があったーー。
豪華な造りのその城は、先端が高く尖った円筒系の塔が美しく、外観は色褪せてはいたが、翳りのない優雅な佇まいを見せていた。
街の果ての奥深く、うっそうとした暗い森の樹々に隠されるようにそびえる城は、
そこだけがまるで時の中に取り残されて、異世界を感じさせるようでもあった……。
『その城に、足を踏み入れてはならない。
その城は、魔の者が棲む妖かしの禁域……
ひとたび入り込めば、禍々しき魔物に心を奪われ、
二度とは城から出ることが、叶わなくなるだろう……。
禁忌の城へは、何人たりとも決して近づいてはならない』
昔から、街にはそんな言い伝えがあったーー。
言い伝えは、古くから人づてに受け継がれる内、
真実味を帯び、恐怖感を増して、
今となっては、誰もその城へ近づくことすらなくなっていたーー。
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