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「何をしに、ここへ来たんだ!」
どこからか、不意に低い声が浴びせかけられた。
「誰!?」
彷徨うように揺れる細い明かりが、広間の大階段の先にある中二階の手すり越しに、一人の男の姿を照らし出した。
「よせ! この私を照らすなっ!」
ーー途端、向けられた光に男は叫んで、手で覆うように顔をそむけた。
「あなたは、ここに住んでる人なの?」
問いかけには答えずに、
もう一度、
「その灯りを消せっ!」
と、怒鳴るような声を上げた。
仕方なく灯りをふっと吹き消すと、
真っ暗な中に、
「ここから、出てゆけ!」
という声が、幾重にも木霊して響いたーー。
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