プレリュード「幕開けを告げる序曲」

5/52
132人が本棚に入れています
本棚に追加
/513ページ
「何をしに、ここへ来たんだ!」 どこからか、不意に低い声が浴びせかけられた。 「誰!?」 彷徨うように揺れる細い明かりが、広間の大階段の先にある中二階の手すり越しに、一人の男の姿を照らし出した。 「よせ! この私を照らすなっ!」 ーー途端、向けられた光に男は叫んで、手で覆うように顔をそむけた。 「あなたは、ここに住んでる人なの?」 問いかけには答えずに、 もう一度、 「その灯りを消せっ!」 と、怒鳴るような声を上げた。 仕方なく灯りをふっと吹き消すと、 真っ暗な中に、 「ここから、出てゆけ!」 という声が、幾重にも木霊して響いたーー。
/513ページ

最初のコメントを投稿しよう!