この体が溶けきるまでに

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 僕は今、溶けている。  心がなどという情緒あふれる例えではなく、体が。  だって、チョコレートだもん。  本来人の体で溶けていくこの身が、無造作にテーブルに投げつけられて、このザマ。  うーん、投げられたと言うか。  手から零れ落ちてしまった感じ。  経緯の理由としては、僕を食べようとしたご主人様が、他人に刺されてしまったから。  だから、僕は今、溶けている。  どんどんどんどん。  溶けている間に、ご主人様が手をわずかに動かしていた。  けれど、僕の体が半分くらいになった頃には、もう動かなくなっていた。  だから、僕は今溶けているなかでも、ちょっと考えていた。  ご主人様は多分死んでしまった。  だから、誰にもせめて食べてもらえなかったこの恨みを晴らすべく。  犯人さん、ご主人様の代わりにこの僕が、ダイイングメッセージを残してやるよ。  犯人は。  か・せ・い・ふ。  ……僕、溶けきったよ。  ご主人様、さっきつままれたばかりで特に恩とかも無いけど。  ご主人様の無念、晴らしたよ。  これで安らかに眠れ――。 「きゃああ! ご主人様、ご主人様!! ……あれ? ”コック”ってこれ、もしかしてダイイングメッセージ!?」  あ、ごめん眠れない、間違えた。  このあと、病院に搬送され、目を覚ましたご主人様が、真実を明らかにしてくれたから、僕は安らかに眠ろうと思います。 (了)
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