《53》

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「野田城も福島城も、すぐに陥ちるのであろうなあ」 野田、福島の城は摂津の要衝だ。これが陥ちれば摂津、大坂の攻略は成ったも同じなのである。 「確かに。我が方は三好方の倍からなる兵力ですから。ただ、雑賀衆はいくさに慣れていてかなりの精鋭だと聞いております。最後まで油断は禁物です。それに、闇の方もありますし」 「ああ、そうだな」  半兵衛が言う闇とは、各地の大名を信長打倒に駆り立てる謎の力のことだ。 事実、越前攻略の際、裏切る筈のない浅井長政が裏切った。 しかも、信長の陣中には将軍家の御旗を立てていたのだ。 浅井家が将軍家に弓を引くというのは歴史を考えればあり得ない事だった。浅井家の元々の主筋である六角家は長く足利将軍家の庇護者だった。その流れを汲みする浅井家は将軍家に心服している筈だったのだ。 「やはり、義昭が暗躍しているのかのう」 こめかみの汗を拭い、秀吉は言った。 この件に関しては今、方々に人をやり調査中だ。 「義昭にそこまでの度胸はないでしょう」 「と、すると」 「義昭に入れ知恵し、動かしている人物がいるのかと」  半兵衛が言った後、秀吉の脳裏にすぐ浮かんだ顔があった。松永久秀だ。
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