《45》

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 5人居た。最初、さしで決着をつけるという話だったが、それは見事に破られた。 まぁ、ありそうな事だった。焦る事はなく、虎松は棒を持ち直し半身の姿勢で構えた。廃寺の本堂を背にして並ぶ5人を見た。 皆、虎松よりいくつか年上で、12、3歳といったところか。 全員木刀を手にしている。1人、肩にかけた包帯に腕を吊っている奴が居た。川辺屋久松だ。2日前、虎松は屋久松の腕を叩き折った。屋久松が虎松を裏切り者の息子、と揶揄したのだ。虎松はそこまでしか覚えていない。気がつけば、顔が腫れ、腕が妙な形に曲がった屋久松が地面に倒れていた。 その時の落とし前をつけたいから、井伊谷(イイノヤ)城の北、引佐にある廃寺にこい、と虎松が呼び出されたのは昨日の事だ。 松井金丸という男の使いが井伊谷の虎松の所に来たのだった。 「気に入らねえな」 本堂の木の段に腰を掛けた男が言った。こいつが松井金丸だろう、と虎松は当たりをつけた。 「こっちは5人だ。しかも、みんなお前より歳が上で、体も大きい。なのにお前は全然怖がっていない。気に入らねえ。本当に気に入らねえ」  虎松はたまらず、鼻で笑った。それが5人を更に怒らせたようだ。虎松に向けられている5人の殺気が濃くなった。
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