《46》

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「忠高は22で死んだ。そうか。お前はもうあの時の忠高の年齢を追い越したか」 「時々考えます。父上がもし生きていたら今の俺になんと声を掛けてくれるかと」  忠次が声をあげて笑った。 「何も言わんだろう。というより、何も言えん。なぜなら、本多忠勝の武士としての資質は本多忠高の何倍も上だからな」 「いや、酒井殿、そんな」 「間違いのない事実だ」 忠次が真剣な表情で顎を引く。 「お前の叔父などともよく話す。5年前くらいまではお前の成長を皆で喜んでいたのだがな、2年前くらいから感情が変わってきた。わしもお前の叔父忠真も大久保忠世なども皆、本多忠勝を尊敬し、憧れている」 「持ち上げすぎですよ、酒井殿」 「足りぬくらいよ」 忠次が言った。忠次の表情は和らぎ、実に楽しそうである。 「お前が13で元服した時、実は最初は皆心配していたのだ。あの本多忠高の忘れ形見だからな、お前は。期待も大きかったし、重圧に押し潰されやしないかと心配もした。だが、お前は我々の想いの遥か上を駆けていた。わしはこの歳まで生きてきて本当に良かったと最近つくづく思う。本多忠勝を見れているのだからな」  照れて火照った忠勝の顔を小雨が冷やす。 「なんだか妬けるなぁ」 兜に両手を乗せて康政が言った。 「忠勝ばかり褒められて」 「お前もかなり良いぞ、康政」 忠次が言う。 「昔は小賢しいだけの小僧だったが、良い意味での崩れが出てきた。それは多分忠勝の影響なのだろう。そして忠勝は康政の影響でかなり大人びた。良い影響を与え合っている。お前たち二人を見ていたら羨ましくなる。友とは本当に良いものだ」
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