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岡崎城下に徳川軍の主だったものたちが兵を引き連れて集結していた。忠勝は家康の旗本で、右備えに配置された。岡崎城大手門前では多くの人たちが見送りにやってきた。
忠勝は人だまりの中に唹久、乙女、すみれ、そして小松の姿を見つけた。
唹久と乙女に両側から手を繋がれた小松がぴょんぴょん跳び跳ね、何かを叫んでいる。耳を澄ましたが、多くの人声が入り交じっている為、小松が何を言っているのか、判別することはできなかった。
「小松。良い子で待て」
忠勝は馬上で声に出して呟いた。
いくさに臨むのだ。生きて帰る事など考えるべきではない。
しかし、小松にまた会いたいという気持ちは抑えず、あるがままにした。それが忠勝に力を与えるのだ。
「進軍が開始されます、兄貴殿」
傍にいる梶原忠が言った。
本陣で葵の旗が動き始めた。
背中に歓声が当たる。忠勝はもう小松に振り返らなかった。
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