《66》

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「勝頼は昔から言い出したら聞かなくてのう」 眼を閉じたまま、信玄が笑った。 「これより、3年の間、勝頼をよく見てやってくれ。それでお主ら二人で見極めてやってくれ。勝頼が当主たる器かどうか」 「まるで、別れのような物言いでございます」 馬場信春が言って、唇を噛みしめた。 「自分の体じゃ」 笑顔を崩さず信玄が言った。 「よくわかる。だから、お主らに伝えるべきことをすべて伝えようとしているのだ」  馬場信春と山県昌景が無言で涙を流し始めた。 昌幸だけが落ち着いた表情である。 「昌幸」 「はい」 「勝頼をよく補佐してやってくれ。こいつはお前の言う事だけはよく聞く」 「不肖、真田昌幸、身命に変えましても、勝頼殿と武田家を支えてゆきます」 「それから、わしの死は3年は秘しておけ。ここぞとばかりに攻め込んでくるものもおろうしのう。派手な葬儀などもするな。遺体は、そうじゃな。諏訪湖に沈めてくれ」
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