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「よっ!久しぶりだな」
「タカヤさん!どうして?」
「どうして?出てもいないのにここにいるのかって?」
「えっと・・・」
「今夜は真莉絵の卒業祝い。メシ食いに行くぞ。俺のおごりだから、ついでにおまえの卒業も祝ってやるよ」
「あの」
「真莉絵から、また逃げられるから連れて来てって言われたんだよ」
「でも、俺」
「あんた、真莉絵のストーカーしてるって?」
「うわっ!」
思わず声が出てしまった。
タカヤの後ろからずいっと現れたのは、苦手なカガミさんだった。二度ほどライブで鉢合わせたが、いつも一言毒を吐かれる。
今日はストーカー呼ばわりか。まあ当たらずとも遠からずなので反論はしない。
切れ長の涼やかな目が放つ視線には、いつも以上に棘があった。この人のどこが良くて、真莉絵が慕っているのか訳がわからない。
「なんだ、加々見も来たのか?」
「このガキが呼ばれてるのに私がいないわけないでしょ!」
「おい、こんな可愛い子にまで毒づくなよ」
「ふん、真莉絵のお気に入りじゃなかったら、とっくに通報してるわ」
通報?まったく、何でここまで嫌われてるのか、単に俺が気に入らないとしか思えない。
だが、夜間10時過ぎにうろついて補導されるとヤバイのは確かだ。連ドラ放送前に問題起こすわけにはいかないぐらいの分別はある。
腕時計を見るとすでに10時を回っていた。行くべきじゃないとわかっているのに、真莉絵に囁かれた誘いの声が、すでに脳内の理性を風前の灯にしている。
いや違う!時間だの理性だの関係ない。俺は真莉絵に近づくのが怖いんだ。
この誘いに乗ったらもう止められない。
逡巡する俺にしびれをきらしたタカヤは、行くぞの一言で俺の戸惑いなんかお構いなしに腕を掴むと引きずるようにバックヤードに向かって歩き出した。
「時間が気になるのか?俺は通報なんかしねーぞ、おまえの立場ぐらいわかってるさ真莉絵だって」
「・・・ちがう・・・」
「じゃあ、何だ?真莉絵と話したくないのか?」
返事ができずにいる俺を、ちらりと見ながらカガミさんが言った。
「子どもなのよ、真莉絵のそばに行くのが怖いんでしょ?」
(こ・ど・もっ!)
いちいち腹が立つ、何でわかるんだよ!思わず睨み付けたら、フンっと鼻で笑われた。
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