第1章 シロツメクサ

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(ガッシャーン。ドバドバドバ…) 一瞬何が起きたかわからなくて顔を顰める。周りには大量の土と雑草が散らばっている。むせかえるような、草の汁の匂いに思わず鼻をつまむ。犯人は見なくてもわかる。 『何か用?村本。』 「よお、鈴原。朝は俺の有難い挨拶を無視しやがっていい度胸だな。せっかく同じ学校に進学したんだ。歓迎のフラワーシャワーだよ。」 少年のような無邪気な笑顔で私の顔を覗き込む。手にはビリビリに引き裂いた赤いビニール袋が見える。全く何を考えているんだか。肩や頭についた泥をはらい、 『一生関わるな。邪魔だ。』そう言って足早にその場を去った。片付けなど知った事か。あいにく最終のバスまで時間がないんだ。バカに構ってるほど時間に余裕はない。 それに、深入りすれば相手の思うツボだ。大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫…と自分に言い聞かせた。なんとかバスには間に合ったものの、 『母さんになんて説明しよう。』まだ拭いきれていないブレザーを見てそう考えるので頭がいっぱいだった。昔のことがあって以来、うちの母さんは人一倍心配症なのだ。
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