第2章

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 カフェで待つのを諦めて晴が2階の部屋に戻った時には10時になろうとしていた。それから1時間、食事を取らずベットに横になっていた。 (僕ってなんで睦月から返事が直ぐに来るのは当たり前だって思ってたのかな?そんな関係でもないのに)  部屋には晴のため息だけが満ちていた。そんな時、晴の携帯から着信を知らせるメロディーが流れた。晴は直ぐに対応出来るように肌身離さずもっていた携帯を、画面の確認もせずに通話をオンにした。 「はい、もしもし?」 『悪い遅くに。朝のメールに返事が出来なくて悪かった。』 「睦月?……大丈夫、心配しないで僕も全く連絡してなかったのにいきなりメールしてごめんね」  晴は身体を起こして話し出した。声は少し沈んでいた。   『晴は悪くない。せっかくメールくれてたのに、今日に限って携帯を持っていくのを忘れたんだ』 「えっ、睦月が忘れ物?なんだか信じられない」 『俺を完璧な人間だとでも思っていたのか?』 「はは、ごめん、そうかもしれない」  あんなに曇っていた晴の顔に笑顔がもどっていた。言葉にも力が戻っていた。 『ケーキ、完成したのか?』 「うん」 『くそっ!食べたかった』 「本当にケーキが好きなんだね~。睦月は」 『いや、ケーキだけじゃないぞ、甘いものなら何でも好きだ』 「すごっ!」  ベットからラグに降りた晴は寛いだ格好でクッションを抱きしめながら会話を楽しんだ。 『別に凄くないと思うけどな』 「う~ん、そうか、僕の出た専門学校にもそういえば居たな~」 『専門学校?大学は行かずに専門に行ったのか?』 「違うよ、社会人になってから行き直した。睦月は?」 『俺は普通に大学に行って就職した』 「なんの仕事してるの?」 『秘書だ』 「えっ、秘書って携帯なくて良いの?」 『仕事用は持ってた』 「えっ!じゃ、2つの携帯持っているの?」 『あぁ』 「凄いね~」 『なぁ、晴、明日もう一度ケーキ用意できないか?』 「明日?」 『明日ならお店が終わる頃に行けると思うから、その新作、食べさせてくれないか?』 「もちろん!作るよ」 『ありがとう。じゃ、明日行くから』 「うん。待ってる」 『じゃあ、明日』 「うん。またね」  通話を切った晴はやっと夕食も食べていないことを思い出した。食事の代わりに下のカフェからケーキを部屋に持ってきて、出来栄えの確認を込めて頬張った。睦月に負けず劣らず甘いものが好きな晴だ。 「うん、美味しい」  それは満足出来る味で、満面の笑みになる。これを食べて貰えなかったのは悔しいと思いながら、明日はもっと美味しく作ろうと思う晴だった。  そして睦月の声を聞き、彼のもたらした安心感に包まれて、その夜は安らかな眠りについた。
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