第1章

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 晴は(おそ)(おそ)る音を立てた扉に近づきノブに手を伸ばした。開いた扉の先には腰にバスタオルを巻き、身体を軽く()いただけで水滴を肌に(まと)って立つ睦月がいた。    晴と直接目を合わせた睦月は端正な顔で悪戯(いたずら)を思いついた子どものように笑った。その笑顔を見た瞬間あの時大人の雰囲気でBarに居た時と違う可愛い空気を(まと)う睦月の姿に、身体の中を電気が走り抜けたのを感じた。それはドキっというときめきだった。真っ赤な顔で固まる晴を悪戯っ子のように笑う睦月は紙袋を持つ腕を掴んで自分の方に引っ張ると部屋の中に引き入れた。晴の耳には後ろで大きな音を立てて閉まる扉の音が聞こえた。 「うわっ!」  引っ張られた勢いで指から弾けた紙袋が音を立てて廊下に落ち、固まったまま目を白黒させ晴は気が付くと靴も()いたまま、身体を廊下の壁に強く押さえ付けられ(あご)クイ状態の姿で睦月と視線を合わせた。。 (なにこれ?え、何?ドキってなんだよ僕!)  自分心の中で自分にツッコみを入れながら、瞳をせわしなく左右に彷徨(さまよ)わせて混乱している晴をよそに、睦月は悠然(ゆうぜん)と微笑みを晴に送ると文句を言おうと口を開いた瞬間を狙い晴の唇を奪い深く舌を入れてきた。 「ん、・・・イヤ、ん、・・・むぅ、ん」  晴は深いキスを拒否して頭を振りながら睦月に腕で振り上げた。その腕を軽々掴んだ睦月は片腕で1つにまとめて壁に押さえつけ、どんどんキスを濃厚なモノにして晴の腕から徐々に力を奪っていった。  抵抗をしようとしていた晴の腕からは力が抜け芯を失い、いつの間にか(すが)るように睦月の首に両腕を巻き付け晴はしがみつくように抱きつき晴もキスに答え始めた。睦月も晴の身体を熱を持った腕で抱きしめ返し、お互いに立ち上がり堅くなったオスを布越しに擦り合わせ鼻でのせわしない呼吸を繰り返した。  
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