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車の中で晴は睦月に話かける事が出来ないほど緊張していた。
「晴、どうした?」
「いえ、大丈夫」
「なんだか変だな・・・ところで、お前年はいくつだ?」
「あ、36」
「なんだ、4つも年上か?」
「えっ!嘘!」
「嘘はこちらだ」
驚いた晴は睦月の方に思いっきり身体ごと振り向いた。ハンドルを回して右折しながらなんでもないように話す睦月に食いつくように話かける。
「4つって睦月32なの?見えない・・・」
どう見ても睦月は同じ年か年上と言える程落ち着いていた。
「失礼な奴だな~どう見ても俺の方が年下だろうが」
「どこがだよ~」
「ま、晴が幼く見えるのが悪いって事だな」
「なんだよそれ?」
その言葉に晴が睦月の肩を押すと、信号で止まった睦月は、こちらに身体を向けている晴の頭に手を回すと濃厚なキスを仕掛けて来た。
条件反射のようにそれを受け止めた晴は後ろの車に急かされるまでキスに溺れた。
「睦月のスケベ」
「お互い様だろ?」
「もう!」
いつの間にか晴の口調は砕けていた。いつもは案外人見知りであまり知らない人と打ち解けにくい晴にとって初めての経験だった。それはきっといきなりキスしてくるような睦月だからだと思っていた。
2人の他愛のない会話は晴の家に着くまで続いた。
家まで送ってもらいカフェの2階のワンルームの部屋に入ると、寒がりな晴は暖房を入れセミダブルのベッドに横になった。
「なんでかな~濃い1日だったな~」
うつ伏せから仰向けになると着替えをすることも、夕食を食べることもしないまま眠りの中に落ちて行った。
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