プロローグ

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 太平洋を一望できる観覧車に、潮風を切りながら駆け抜けるジェットコースター。五感に訴えかける仕掛けを施したゴーストハウス、そして最新技術を駆使したナイトショー……非日常の空間は、日常生活に疲弊しきったゲストの心にエネルギーを注ぎ込んでくれる。  ここは太平洋を一望できる遊園地・オーシャンズパラダイス。年間のべ800万人が訪れる大規模な遊園地だ。みのりは6歳の息子・和樹と共に新幹線で2時間かけてここにやって来た。シングルマザーとして日々の仕事や家事などに追われて目まぐるしく過ぎる生活から少し離れ、和樹と親子水入らずの時間を過ごすためである。  午前中は飛びうおをかたどった回転型のアトラクションやティーカップ、そしてジェットコースターに乗り、ロッジ型のレストランでは昼食のハンバーグに舌鼓を打った。ときには高揚感、ときには安らぎ、そしてときには清涼感を覚えた2人。しかしみのりにとっての1番の癒しは、和樹が満面の笑顔で楽しんでいてくれることだった。  ところが、みのりは焦っていた。  昼食後次のアトラクションに行こうとしたとき、和樹がいなくなっていることに気づいたのである。
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