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実際の職場での評価は、微妙なメルローチェ。
決まりの悪さに、ついメルローチェはうなだれる。
しかし若者は、トパーズの瞳を興味深げに見開き、大きくうなずく。
「なるほど、それはそれは。美形ぞろいの龍にあって、ひと際愛らしい、一輪の白蓮」
深い嘆息を洩らした若者が、芝居がかった鷹揚な仕草で、深々とメルローチェにお辞儀をする。
「僕はエルマニクス。ロアル城市の統治者、“銀龍女公(アージェンタル・ダッチェス)”ことアルジェンテーヌ公爵閣下の使者、楽人、その他もろもろの側仕えをしております。エルマンとお呼び下さい。以後、お見知りおきを、メル嬢」
「え、えと、こちらこそ」
たどたどしく答えたメル。
どうやら、このエルマンという若者は貴族の家臣らしいが、メルたちのような龍の一族ではなさそうだ。
メルたち“龍(ドラゴン)”は、この世界に暮らす十種の人類のうち、最も早く生じた種族とされている。
外見的には、三番目に生じた人類の“人間(ホムス)” に酷似しているが、他の人類が持たない様々な特性を持ち、“人類の長兄”などと呼ばれる。
反面、人口は極端に少なく、全世界の龍を集めても数千人程度だろう。
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