第一章 緑衣の騎士への招待状

6/81
136人が本棚に入れています
本棚に追加
/559ページ
 実際の職場での評価は、微妙なメルローチェ。  決まりの悪さに、ついメルローチェはうなだれる。  しかし若者は、トパーズの瞳を興味深げに見開き、大きくうなずく。 「なるほど、それはそれは。美形ぞろいの龍にあって、ひと際愛らしい、一輪の白蓮」  深い嘆息を洩らした若者が、芝居がかった鷹揚な仕草で、深々とメルローチェにお辞儀をする。 「僕はエルマニクス。ロアル城市の統治者、“銀龍女公(アージェンタル・ダッチェス)”ことアルジェンテーヌ公爵閣下の使者、楽人、その他もろもろの側仕えをしております。エルマンとお呼び下さい。以後、お見知りおきを、メル嬢」 「え、えと、こちらこそ」  たどたどしく答えたメル。  どうやら、このエルマンという若者は貴族の家臣らしいが、メルたちのような龍の一族ではなさそうだ。  メルたち“龍(ドラゴン)”は、この世界に暮らす十種の人類のうち、最も早く生じた種族とされている。  外見的には、三番目に生じた人類の“人間(ホムス)” に酷似しているが、他の人類が持たない様々な特性を持ち、“人類の長兄”などと呼ばれる。  反面、人口は極端に少なく、全世界の龍を集めても数千人程度だろう。     
/559ページ

最初のコメントを投稿しよう!