第一章 緑衣の騎士への招待状

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 メルはぎこちない動作ながら膝をわずかに屈め、両手の指先でつまんだ法衣の裾をそっと持ち上げた。  洗練された仕草とはとても言えないが、一応、作法には則っているはずだ。  エルマンはそれでも満足げに、うんうんと何度もうなずく。 「ああ、実に初々しい。しかも、あの至聖の中央万神殿(ラ・パンテオン)の書記とは。まさにあなたは才色兼備の鑑、ですね。メル嬢」 「え? えと、そんな……」  ……生まれて初めての最大級の賛辞だ。  嬉しくない、と言えばウソにはなるが、いくら何でもちょっとお世辞が過ぎる、気がする。  メルはまじまじとエルマンの顔を見上げたが、当のエルマンは屈託のない笑顔を浮かべている。  こういう台詞、言い慣れているのだろうか? やはり貴人は違う。  戸惑うばかりのメルは、傍らの騎士ネウィルの顔をちらりと覗った。  すっくと立つ騎士は、腕組みしたまま微動だにしない。  表情はいつもどおりの飄々ぶりだが、目線は半眼、引き結んだ口元は妙に堅い。  普段の冷静さとはどこか違って、何か落ち着かない雰囲気が漂う。  ……あれ? もしかして、怒ってる?  そう感じた自分を疑って、メルはぱちぱちと目を瞬かせた。  そんな彼女の前に、エルマンがうやうやしく片膝を着く。     
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