第三章 “銀龍女公” 女公爵アルジェンテーヌ

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 すぐに足音はメルたちの四歩前で止まり、男たちの一団が霧の中から姿を現わした。  武装した十人足らずの男たちだ。  メルはこそっと騎士の陰に隠れつつ、男たちを観察してみる。  年恰好は様々で、まだ幼さの残る少年もいれば、髭面の壮年もいる。  どうやら戦士の集団のようだ。  が、身に帯びた装備は、剣やら斧やら槍やら一人一人違っていて、統一感はまるでない。  浮かべた表情も色々で、眠そうな中年に緊張みなぎる若者と、何から何までごちゃごちゃの一団だ。  共通しているのは人間の男だ、ということくらいのものだろう。  そんな寄せ集めの先頭に立つのは、ランタンを掲げた男。  黒光りする鎧に身を包み、背中に大剣を背負った戦士だ。  年かさは、ネウィルよりも少し上に見える。  練磨の戦士らしい風格が、黒い髭の生えた顔に漂う。  その戦士が、ネウィルに声をかけてきた。  よく通る低い声に、メルの羽織るマントがびりびり振動する。 「あんた方、ここで何してる? 見かけない顔だが、このロアルに何しに来た?」  聞き覚えのない訛りがある共通語。  警戒心も露わな目をネウィルに向けながら、戦士が堂々と、しかし非友好的に問う。  対する騎士ネウィルも、戦士に向かって泰然と答える。     
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