第三章 “銀龍女公” 女公爵アルジェンテーヌ

7/71
136人が本棚に入れています
本棚に追加
/559ページ
「アルジェンテーヌ公爵のお召しにより、たった今、西大陸からこのロアルへ到着した者だ。謁見のため、公爵の館へ参る」 「すると、あんたがあの噂に名高い“緑衣の騎士(ナイト・イン・グリーン)”ってワケか」  戦士の顔に、驚きの色が浮かんだ。  ランタンを持ったまま腕を組み、怪訝な顔を崩さずに戦士が軽くうなずく。 「話は側仕えのエルマンから聞いてる。『今日明日の内に緑衣の騎士が現われるハズだから、会ったら連れて来い』、ってな」 「それならば話は早い」  ネウィルもうなずいた。  肩越しにチラリとメルを一瞥して、戦士に言う。 「連れの消耗が激しい。一刻も早く、館へ行きたいのだが」 「いいだろう。館は知ってるか? すぐ近くだけどな」  ネウィルが無言でうなずくと、戦士は居並ぶ男たちの一人を指差した。  革の鎧と手槍、それにランタンを持った少年戦士。  無造作な黒髪と、幼さの残る黒いまなこが印象的だ。 「一応、お前がついてってやれ。俺たちは夜警を続ける。後で合流な」 「りょーかいっス」  軽く答えた少年戦士をこの場に残し、大剣の戦士は男たちを引き連れて去っていった。  霧の奥へと再び消えてゆく戦士の一団を見送って、少年戦士がネウィルを見上げた。  ネウィルはもちろん、メルよりもかなり年下のようだ。     
/559ページ

最初のコメントを投稿しよう!