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「繰り返しになりますが、お返事は『期日までに行動で示せ』、との閣下の仰せです。よろしいですね? “緑衣の騎士(ナイト・イン・グリーン)”ローサイト卿」
「分かっている。銀龍女公には、よしなに伝えろ」
はっきりうなずいた騎士を見て、エルマンがにっこりと笑顔を浮かべた。
悪意らしい悪意は全くうかがえない、屈託のない笑みだ。
そんな無邪気な表情のまま、彼が再びメルに黄色の視線を向けてくる。
「それではごきげんよう、メル嬢。そうだ、あなたもぜひ、ローサイト卿とともにロアル城市へお越し下さい。我が主は、必ずやあなた方を歓待するでしょう」
「あ、はい。ありがとうございます……」
一応お礼はしたものの、メルの声は戸惑いに満ちた生返事以外の何者でもない。
しかしエルマンは、意に介さないようだ。
彼は笑顔のまま、大げさな動作でお辞儀を一つ残し、この古い館を颯爽と立ち去った。
がらんとした玄関広間に再び静寂が充溢する。
染み入るような夕刻の静けさに、メルはほっと安堵した。
が、彼女の頭の中は、山盛りの疑問符で破裂しそうだ。
……あのエルマンって、どういうひと?
何しにうちへ来たのだろう?
それにロアル城市ってどこで、統治者の『銀龍女公』って誰だっけ?
招待状って何のこと?
大体、ネウィルがうちに来てるのって、どうして?
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