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数々の疑問の答えを求めて、メルは寄り添うように立つ騎士ネウィルを見上げた。
そのネウィルは難しげに目を伏せている。
しゅっとした愁眉を険しく寄せた彼から不安の空気を感じ取り、メルの胸まできゅんと痛んでくる。
「……ネウィル?」
彼の憂いが感染したのか、メルの呼びかけもついついか細くなってしまう。
だが、ネウィルがゆっくりと目を開いた。
その群青の瞳は、メルの顔と一緒に複雑な陰影を映している。
不審、迷い、それに気遣いのようなもの。
吸い込まれそうなほど深い色の騎士の目に、意図せず見入ってしまったメルだった。
そんな半分ぼんやりのメルの鼻先に、何かがひらりと翳された。
途端に、何か甘く濃厚な香りがメルの鼻を悩ましくくすぐる。
ハッと我に返った彼女は、ネウィルが差し出したその白く薄い物に両手を延ばす。
「封筒?」
メルが受け取ったのは、香水が振り掛けられた純白の封筒だ。
宛名はない。
裏返してみると、フタは何か紋章の浮いた赤い蝋で堅く緘してある。
しかし封筒の一辺はすでに破られていて、中身は読まれた後のようだ。
一体何の封書だろう? と、メルが疑問を口にするより早く、ネウィルが口を開いた。
「招待状だ」
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