136人が本棚に入れています
本棚に追加
二
メルは、雪のように白い招待状に視線を注ぐ。
くっきりと真一文字の折り目が走る紙面には、肉筆の文字が数行、したためてある。
誰でも読める共通文字だ。
流れるような、驚くほど洗練された綺麗な筆跡。
たぶん、良家の女性が書いたものだろう。
だが丁寧な書体には、繊細さよりも思い切りのいい力強さが漂う。
メルは、そんな招待状の文面を、小さく声に出して読み上げてみる。
「『親愛なるネウィル=ブラン=ローサイト卿。
急啓。
現下、我がロアル城市は『魔術師大全』なる書の為、危難の兆し有。
至急、貴殿の助力を乞う。
願わくば、本状を受け取りてのち、五日以内に館まで来られたし。
歓待せしめん。
不一。
シャフラ=デ・ロアーレ=アルジェンテーヌ』……」
古風で簡潔な文章だが、反面、有無を言わせない迫力に満ち満ちている。
なるほど、ネウィルが『体のいい召喚状だ』と称した意味が、よく理解できたメルだった。
しかし、メルが抱えた疑問は、減るどころか逆に増えてしまった。
……『魔術師大全』って、初めて聞くけれど、何だろう?
最初のコメントを投稿しよう!