第一章 緑衣の騎士への招待状

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二  メルは、雪のように白い招待状に視線を注ぐ。  くっきりと真一文字の折り目が走る紙面には、肉筆の文字が数行、したためてある。  誰でも読める共通文字だ。  流れるような、驚くほど洗練された綺麗な筆跡。  たぶん、良家の女性が書いたものだろう。  だが丁寧な書体には、繊細さよりも思い切りのいい力強さが漂う。  メルは、そんな招待状の文面を、小さく声に出して読み上げてみる。 「『親愛なるネウィル=ブラン=ローサイト卿。   急啓。   現下、我がロアル城市は『魔術師大全』なる書の為、危難の兆し有。   至急、貴殿の助力を乞う。   願わくば、本状を受け取りてのち、五日以内に館まで来られたし。   歓待せしめん。   不一。   シャフラ=デ・ロアーレ=アルジェンテーヌ』……」  古風で簡潔な文章だが、反面、有無を言わせない迫力に満ち満ちている。  なるほど、ネウィルが『体のいい召喚状だ』と称した意味が、よく理解できたメルだった。  しかし、メルが抱えた疑問は、減るどころか逆に増えてしまった。  ……『魔術師大全』って、初めて聞くけれど、何だろう?      
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