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それにこの召喚状、いや招待状を読んだネウィルは、どこへ何をしに行ったのか?
おまけに、『シャフラ』とは、確かに女性の名前だ。
銀龍女公とは間違いなく女性で、女性からネウィルへの招待状なんて、悪い胸騒ぎしかしない。
でも、たぶんきっと、ネウィルはその『危難』を防ぎに行くのだろう……。
ほの暗い玄関広間の真ん中に突っ立ったまま、メルはあれこれと思案に暮れる。
つい時間の経つのも忘れて考え続けるメルの耳に、年長の女性の声が聞こえた。
「ただいまー。遅くなってごめんなさいね」
ふっと現実に引き戻されたメルは、招待状を封筒に戻し、肩のバッグにしまい込んだ。
そして振り向くと、深緑の軽快なワンピースに身を包んだ女性が立っている。
栗色の長い髪をきっちりと結い上げた、年長の美女。
落ち着き払った佇まいながら、どこか悪戯で活発な印象が漂う。
「あ、お母さま。お帰りなさい」
メルの母テオファナだ。
手には質素な麻布のバッグを両手で提げている。
何が入っているのか、ずっしりと重そうに映る。
「あら、メルローチェ。あなたもお帰りなさい。お勤めご苦労様でした」
にっこりと笑って娘をねぎらった母親だったが、すぐに玄関広間を見渡して、こう聞いてきた。
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