第一章 緑衣の騎士への招待状

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「ローサイト卿は? どちらに行かれたのかしら?」 「えっ? お母さま、ネウィルに会ったの?」  メルが驚きの声を上げると、母親はこともなげにうなずいた。 「ええ。お茶の時間の頃かしら。ローサイト卿がいらしたの。わたくし、ちょっと急ぎの用ができたものだから、ローサイト卿にお留守番をお願いしてしまったのよ」 「お母さま……」  いくら自分の甥とはいえ、ネウィルは諸国に名立たる騎士だ。  そんな彼を捕まえて留守番を言いつけるとは、さすがとしか言いようがない。  呆れ半ば、感心半分の視線を注ぎつつ、メルは聞いてみた。 「お母さまの急ぎの用って?」 「広場にメロン売りが来てたのよー。ほら」  母親は弾けるばかりの無邪気な笑顔で、メルに袋の口を開いて見せた。  中には、浅葱色の新鮮なメロンがごろごろと入っている。冷水に浸されていたのだろうか。  灯火を受けた水滴が、宝石飾りのように煌めく。  ほのかに香る甘い匂いに、呆れるメルの唇もついほころんでしまう。  母親が、張り切った胸を得意げに反らせた。 「ほらほら、この神殿集落は城壁都市だから、畑が少ないでしょ? 外からの新鮮な果物とか、貴重品ですもの。特に南の田園から売りに来るメロンは、本当においしいのよ」     
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