第一章 緑衣の騎士への招待状

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「いいですか? メルローチェ。明日の夕方、ローサイト卿はきっととても困って、この家にいらっしゃるでしょう。あなたはできるだけ、ローサイト卿の力になっておあげなさい」  もちろん、いつだってネウィルの力になりたいと思っているメルだ。  大きくうなずく彼女だったが、ふと不思議に思う。 「どうしてそんなことが分かるの? お母さま」  まじまじと見つめる娘に、母テオファナは自信たっぷりの笑顔を浮かべて見せる。 「女の勘、ですよ」  言い切った母の顔は、可愛い弟を気遣う姉のようだ。  確かに、今は名立たる“緑衣の騎士”ネウィルも、その昔の少年時代は、母テオファナが何かと世話を焼いたらしい。  何となく、母親が羨ましく思えたメルだった。  そんなメルが母親にさらに問おうとした時、玄関の扉が開き、はっきり通る太い声が響いた。 「今帰ったぞ」  続けて姿を現わしたのは、質素だが厚みのある白い法衣を着込んだ壮年の男。  灰銀の髪も清潔に整えていて、高い鼻の下で、ハンドル髭がぴんと天を指している。 「あ、お父さま。お帰りなさい」  このメルの父マルクセスは、中央万神殿の書記を束ねる書記総長の地位にある。  家庭では父娘の二人だが、仕事場では上司と部下だ。    妻である母テオファナも、にっこり笑顔で夫を出迎える。 「あら、お帰りなさい、あなた。今日もお勤め、お疲れさまでした」 「あ、ああ」     
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