第一章 緑衣の騎士への招待状

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 一応、父親の表情で答えた彼だったが、母親とメルをまじまじと見比べ、不思議そうに聞く。 「二人とも、こんなところで何をしている? 玄関先で、立ち話などして」  メルは母親と一瞬顔を見合わせた。  が、すぐに父親に目を戻すと、素っ気ない調子でこう答えた。 「お母さまと、銀龍女公のお話をしてたの」 「何? 銀龍女公?」  聞き返してきた父親の表情が、微妙に変わった。  わずかに目尻が下がり、灰銀のハンドル髭に隠れた口元も、心なしか緩んだようだ。  同じ『銀龍女公』の名前を聞いても、父と母とで明らかに反応が違う。 「あの方がどうかしたのか?」  そう問いを重ねた父親の様子は、どことなく楽しそうだ。  そんな父マルクセスの前に、母親がぬっと立ちはだかった。  両手をすらりとした腰に当てた母は満面の笑顔だが、群青の両目だけは射抜くような剣士のものだ。  ……やっぱり怖い。 「あら、あなた。随分とお楽しそうですこと」 「んむ? あ、いや、そんなことはないぞ」  あらぬ方へ視線を逃がしながら、父親が立て続けに数回、首を横に振った。  その表情は、猛獣のしっぽで踏んだかのように、焦りに満ち満ちている。  秀でた額にてらてら光っているのは、きっと脂汗だ。 「おおそうだ、着替えなくてはな」     
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