第一章 緑衣の騎士への招待状

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三  貴重な粘土板を作業台から取り落としたメルは、思わずぎゅっと目を瞑った。  粘土板もろとも、絶望の淵に突き落とされた思いで、破砕音という“死の宣告”を待つばかりの彼女だった。  が、いつまで経っても粘土板が砕ける音は聞こえてはこない。  恐る恐る目を開いたメルに、若い女性の穏やかで優しい声が掛けられた。 「大丈夫? メル」  振り向くと、収蔵室の扉の前に一人の女性が立っている。  メルと同じエメラルドグリーンの可憐な瞳と、肩にかかるさらさらのプラチナブロンドの髪。  緑の縁取りがある白い法衣に、ほっそりとした体を包んでいる。  メルよりも、少し年上だろうか。    女性は繊細な右手で茶器を乗せたトレイを支え、左手がメルの足元あたりの床を指差している。  そのしなやかな指先と、たおやかな首から下げた銀の聖印が、爽やかな新緑にも似た光を放つ。 「粘土板は割れてない?」  女性の気遣わしげな声に、メルは慌てて腰を浮かせた。 「え、えと」  床に視線を這わせてみると、作業台のすぐ脇に、あの古代の粘土板がそのままの形で落ちている。 「ああ、よかったぁ……」     
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