第一章 緑衣の騎士への招待状

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「良かったわ。お茶の差し入れに来てみて。ちょうど”聖霊(スピリタス)”との通交の修練が終わったところで、聖霊がついてきちゃったけれど。それも幸いだったかしら」  このクラウは、森と湖水の神に仕える女神官だ。  メルとは親戚筋にあたり、幼い頃から姉と慕っている。  中央万神殿の中にある至聖所での祭儀の執行、神の遣い”聖霊”との通交の修練などが、彼女の日課だ。  そういう仕事の合間合間に、趣味を兼ねた呈茶に充ててくれるクラウだった。  そんな神官クラウが、陶製ポットを手に取った。  優美な曲線に、淡い虹色の釉薬が妖しく美しい。  彼女が卵の殻のように薄手の繊細なカップに、ポットのお茶を注ぎ込む。  ハーブの清涼な香りが、どことなく埃っぽい収蔵室の中に広がってゆく。 「お茶でも飲んで、一休みしましょう、メル。かなり疲れているみたい」  クラウの静かな囁きが、メルの半ば呆然の意識を少しずつ現実に手繰り寄せる。 「あ、えと、うん。ありがとう、クラウさん」  ようやく生気を取り戻したメルは、堅く抱いたままだった粘土板を慎重に作業台へ戻した。  そして目の前に置かれた純白のティーカップをそっと手に取り、つるつるの縁に唇を寄せる。     
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