第一章 緑衣の騎士への招待状

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 まだ充分熱いハーブティーを口に含むと、ハーブの清々しい香り、それに茶葉の柔らかな渋みが舌の上に広がってゆく。  ぼやけた頭から、霧がすっきりと晴れてゆくようだ。  メルはふう、と大きく息をついた。  堅くこわばった肩、それにいろいろ詰まり過ぎて、はち切れそうな頭から意識を逃がす。  ぼんやり感が、全身を心地よく包む。  そんな放心状態のメルに、作業台に寄りかかったクラウが気遣わしげな視線を注ぐ。 「メルは今、神代レテ語の翻訳中なのでしょう? 難しいお役目、お疲れさま」  クラウのエメラルドの瞳に、称賛の光が宿った。 「この中央万神殿(ラ・パンテオン)でも、神代レテ語を正確に訳せるのは、メルを含めてもほんの数人だもの。さすが、書記総長様の娘ね」 「え、えと、それほどでも、ないけど」  クラウの褒め言葉がくすぐったくて、メルはカップを大きく傾けて熱い顔を隠した。  ちょっぴり恥ずかしい一方で、この中央神殿の書記として確かな仕事に従事している、そんな自負が胸の内に広がってゆく。  少しばかり膨らんだ自慢げなメルの気持ちを知ってか知らずか、クラウが厭味なくくすっと笑って付け加えた。 「でも、メルはちょっとあわてんぼさんだから、気を付けてね。疲れている時は、特に、ね」 「はぁい」  痛いところを衝かれたメルは、小さく首をすくめた。     
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