第一章 緑衣の騎士への招待状

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 ……確かにこのところ大きな失敗こそないが、小さなミスは時々あったりする。  粘土板の破損未遂も、昨日今日の連続だ。  カップを手にしたまま、メルはしおらしくうつむいた。  そんなメルに、クラウが控えめながら心配そうに聞く。 「メルったら、今日は特に疲れているみたいね。何か悩み事でもある?」  メルは顔を上げた。  多少のためらいはあるが、やはり気になって仕方がない。  彼女は優しい笑みを絶やさないクラウに、思い切って尋ねてみた。 「ねえ、クラウさん。“銀龍女公”って、どんなひと? クラウさんは知ってる?」 「銀龍、女公?」  聞き返したクラウの表情が変化した。  整った眉を不安そうに寄せ、穏やかな瞳に暗い陰が薄く広がってゆく。  清楚な口元に滑らかな片手を当て、佇まいはどこか所在なさげに映る。  これはまた父親とも母親とも異なる反応だ。  幼い頃からクラウとの付き合いがあるメルだが、こんな心細げな彼女はほとんど記憶にない。  メルはにわかに不安を覚えた。  そんなクラウが視線をちらちらと虚空にさまよわせ、メルに重ねて聞いてきた。 「メルって、銀龍女公に呼ばれたの?」 「あ、わたしじゃなくて、ネウィルに招待状が来て」     
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