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そう言って、頭を下げた首座総裁が、手にした粘土板をもう一度少女に差し出した。
少女も、震える手を青い粘土に延ばす。
そして首座総裁が手を離したその途端、蒼い粘土板は少女の指先からつるりと滑り抜けた。
そのまま、粘土板は真っ逆さまに床へと落ちていく。
「あっ!?」
少女はびくんと身を縮め、ギュッと目を瞑った。
すくみ上り、震えるばかりの少女の耳に、首座総裁の苦笑が聞こえてきた。
「大丈夫ですよ。落ち着きなさい」
恐る恐る目を開けてみると、蒼い粘土板は、白い光に包まれて、ふわふわと床から浮き上がってくる。
割れたり欠けたりした様子は全くなく、無事だったようだ。
全身から力が抜け、へたり込みかけた少女の手に、蒼い粘土板がするりと収まった。
首座総裁が、物体浮遊の法術を行使し、破損から粘土板を護ってくれたのだろう。
「ああ、よかったぁ……!」
思わずギュッと粘土板を抱きしめた少女に、首座総裁が微笑ましげな、それでいて残念そうな眼差しを注ぐ。
「あなたがもう少しだけ、大海の凪のような落ち着きを身に付けられたなら、あなたの階梯は、それこそ一足飛びで上がるのに。あなたの実力は、第二階書記程度に収まるものではないはずです。本当に、勿体ないことですよ、メルローチェさん」
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