第一章 緑衣の騎士への招待状

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 そう、ネウィルは、迷いの只中に立ち尽くしている。  だが、メルの気持ちはとっくに決まっていた。  ……メルを危険から遠ざけようという騎士の気遣いは、心の底から嬉しい。  それこそ身震いするほどに。  それは事実だ。  でも、今この機会を逃したら、もう二度と訪れてこないかも知れない。  メルが、ネウィルの役に立てる日が。  立ち尽くしたまま、メルはネウィルのたった一言を黙して待つ。  だが幾分経とうとも、目の前の憂える騎士は、口元に手を当てたまま、言葉を綴ろうとはしない。  胸の中の待ち遠しさが、わずかずつ焦りと不安、それに不満に置き換えられていくのが、メル自身で分かってしまう。  じりじりと辛く灼けつくメルの胸の底に、意図に反した疑念が澱み始めた時だった。  長い静寂の果てに、ネウィルがおもむろに顔を上げた。 「……いや、やはりお前の他にはありえない、メルローチェ」  つぶやくようにそう洩らし、騎士がゆっくりと安楽椅子から立ち上がった。  すっくと背筋を伸ばして立った彼の目には、もう一点の曇りも見えない。  どこまでも透明で、青く澄み切った蒼穹のような瞳だ。  何か吹っ切れたように、涼やかな光を取り戻している。  ……ああ、いつものネウィルだ。間違いない。       
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