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ぽふっと安楽椅子に腰を落とし、メルはつぶやいた。
遥かロアル城市への旅、それに銀龍女公の依頼に挑戦するネウィルの手伝い。
安定志向の父が、それを許すだろうか?
今さらのように不安に襲われ、膝の上に頬杖のメルはうなだれる。
母が切ったメロンの皿に何となく手を延ばし、メルは瑞々しいオレンジ色の果肉をひと切れ、口に入れた。
噛むごとに溢れる甘い果汁と芳醇な香りが、舌を覆ってゆく。
絶妙な味わいの、美味過ぎる果実だ。
さすが、母がネウィルに留守番を言い付けてまで買いに行っただけのことはある。
「あ、おいしい……!」
ついメロンに夢中のメルを苦笑交じりに眺めながら、ネウィルも椅子に戻った。
ようやく彼もメロンの皿を手に取り、穏やかにメルに言う。
「安心しろ、メルローチェ。伯父上がどう言われようと、結局は伯母上に押し切られるだろう。それに、銀龍女公のご依頼となれば、伯父上も強くは反対しまい。俺からも説得する」
銀のフォークを唇に当てたまま、メルは顔を上げた。
正面の騎士は、安楽椅子の上からメルを真っ直ぐ見つめている。
その真摯な眼差しがどうにも恥ずかしくて、メルはすぐにまたうつむいた。
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