第一章 緑衣の騎士への招待状

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 言い切った母が、二つのバッグを差し出した。  片方は防水布の質素なショルダーバッグ。  メルが探索の時に、いつも携行している物だ。  だがもう片方のハンドバッグは、メルも初めて見る。 「このハンドバッグは?」  ショルダーバッグを肩に下げながら、メルは受け取ったハンドバッグに目を落とす。  手の中のハンドバッグは、白い革の小さなものだ。  デザインは古風で、かなり使い込まれている。  だが、手入れはしっかりと行き届いているようだ。  母がくびれた腰に両手を当てて、思わせぶりな視線をメルに注ぐ。 「あなたがこれからお会いする銀龍女公は、いつ何を言い出すか分かりません。どうしたらいいのか本当に困ったら、そのバッグをお開けなさい。きっと役に立ってくれるでしょう」 「えっ? それって、どういう意味なの?」  怪訝な眼差しで、メルはハンドバッグと母親とを何度も見比べる。  だが、不敵で曖昧な母の微笑は、全く真意を読み取らせない。  ……一体、お母さまは何を考えているのだろう?   剣士だった母テオファナは、探索で手に入れた戦利品を数え切れないほど持っている。  そんな母親がもったいぶってメルに持たせるからには、これも何か曰くのある一品なのだろう。     
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