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それが何かは、メルには想像も付かないが……。
半眼で絶句するメルに構うことなく、母テオファナが傍らに立つ甲冑の騎士に視線を移した。
「メルローチェのこと、よろしくお願いしますね、ローサイト卿」
全身を銀緑に煌めく鎧に包み、さらに厚い緑のマントにその身を覆った長身の騎士、”緑衣の騎士”と異名を取るネウィルだ。
兜に開いた細いスリットの奥で、群青の目が涼やかに光っている。
年季の入ったザックを逞しい肩に担いだまま、彼が母テオファナに首(こうべ)を垂れた。
「それは逆です、伯母上。伯母上と伯父上、それにメルローチェにまで、余計な手間を掛けさせてしまい、申し訳ありません。こちらこそ、ご面倒をお掛けします」
「え? あ、そんなこと」
慌てたのはメルだ。
強くて尊敬する従兄の騎士が、詫びて頭を下げている。
そんな様子を見るのは、何故かがっかりする。
……謙虚なネウィルは尊敬するが、卑屈なのはヤダ。
でも、ネウィルが自分を頼ってくれるなんて滅多にないことで、それは素直にとても嬉しい。
ごちゃごちゃの整理しきれない気持ちを抱えたまま、メルは寄り添うように立つ騎士を見上げた。
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