第一章 緑衣の騎士への招待状

76/81
136人が本棚に入れています
本棚に追加
/559ページ
 それが何かは、メルには想像も付かないが……。  半眼で絶句するメルに構うことなく、母テオファナが傍らに立つ甲冑の騎士に視線を移した。 「メルローチェのこと、よろしくお願いしますね、ローサイト卿」  全身を銀緑に煌めく鎧に包み、さらに厚い緑のマントにその身を覆った長身の騎士、”緑衣の騎士”と異名を取るネウィルだ。  兜に開いた細いスリットの奥で、群青の目が涼やかに光っている。  年季の入ったザックを逞しい肩に担いだまま、彼が母テオファナに首(こうべ)を垂れた。 「それは逆です、伯母上。伯母上と伯父上、それにメルローチェにまで、余計な手間を掛けさせてしまい、申し訳ありません。こちらこそ、ご面倒をお掛けします」 「え? あ、そんなこと」  慌てたのはメルだ。    強くて尊敬する従兄の騎士が、詫びて頭を下げている。  そんな様子を見るのは、何故かがっかりする。  ……謙虚なネウィルは尊敬するが、卑屈なのはヤダ。  でも、ネウィルが自分を頼ってくれるなんて滅多にないことで、それは素直にとても嬉しい。  ごちゃごちゃの整理しきれない気持ちを抱えたまま、メルは寄り添うように立つ騎士を見上げた。     
/559ページ

最初のコメントを投稿しよう!