第一章 緑衣の騎士への招待状

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「いつも助けられてばかりで、申し訳ないのはわたし、なんだもん。たまには黙って恩返しさせて」  そんなメルの言葉は、図らずも不満そうな響きを帯びてしまった。  自分ですごく生意気そうな感じがしてしまって、メルはおたおたと口を押えた。  しかし、ネウィルの様子に変化はない。  飄々と苦笑めいた息を兜の奥に洩らし、騎士はメルの頭にポンと片手を置いた。 「ひゃ」  メルの頭が、瞬時にぼん、と沸騰した。  思わずびくんと首をすくめ、耳まで火照った彼女から、ネウィルが背中を向けてゆっくりと離れてゆく。 「そろそろ準備をしよう、メルローチェ」  十数歩離れ、ネウィルがくるりと振り向いた。  呆然と立ち尽くすメルに、彼が面頬越しの冷涼な視線を投げて寄越す。 「今日の内に、行程の半分は踏んでおきたい。目標は、この大陸の北岸の街だ。日没までの到着を目指す」 「あ、うん。分かった」 「それで、お前は自分で飛ぶか? 俺が乗せて行っても構わないが……」 「え、え?」  淡々としたネウィルの言葉に、再びメルの脳天に血が集まった。  薄ぼんやりする視界を抱え、メルはぶんぶんと立て続けに首を横に振る。 「あ、え、えと、だ、大丈夫だからっ! 自分で飛べるもんっ!」 「そうか? それならいいが……」     
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