第一章 緑衣の騎士への招待状

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 ほとんど無感情に振る舞うネウィルを、ムッと口を尖らせたメルは軽く睨む。  ……彼と一緒に集落の外に出るときは、何かいつもこのやり取りを繰り返している、気がする。    異性を乗せて飛ぶというのは、龍の一族では婚約も同然。  よく考えたら、これはもうスゴく重大なことなのに、ネウィルはいつもさらっと『乗るか?』などと聞いてくる。  もし、メルが本当に『うん! 乗せて!』と答えたら、ネウィルはどんな顔をするだろう?   ああ、でも、やっぱり言えない。  諦めと反発の吐息をつき、メルは母からててっと十歩離れた。  メルも騎士ネウィルと母テオファナから、充分な距離を置いた、その時。    直立不動の姿勢で立つネウィルの足元から、突然一陣の風が巻き起こった。  砂を巻き上げた旋風が、彼の体を覆い隠す。  法衣の裾がはたはたと捲れるほどの強い風に、メルは両目をぎゅっとつぶった。  すぐに風は止み、メルは堅く閉じた瞳をゆっくりと開いた。  あの騎士が立っていた場所に、彼の姿はない。  代わりに佇むのは、一頭の緑龍だ。  悍馬よりも二回りほど大きな体躯と、それを支える逞しい四肢。  指の先には、鋭い爪が光る。  背中には二枚の深緑の翼を備え、長い首に支えられた爬虫類めいた頭部には、立派な角がある。     
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