第一章 緑衣の騎士への招待状

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 あせあせと答えたメルが、頬に手を当てた。  その手は既にひとの物ではない。  真珠の光沢に覆われた、龍のものだ。  指先には象牙色の鋭い爪がある。  どうやら、龍の姿への変容は成功したようだ。    真珠の龍と化したメルに、緑龍姿のネウィルが群青色の視線を向けてきた。  彼は安堵感に満ちた様子を見せている。 「久々の龍気だが、大丈夫のようだな、メルローチェ。さあ、出発しようか」  それだけ言って、ネウィルが鮮やかな緑の翼を大きく広げた。  ゆっくりと、しかし力強く羽ばたくごとに、その体が宙へと浮いてゆく。    空へと向かう緑龍ネウィルを目で追いながら、メルも桜色も可憐な両翼を羽ばたかせた。  真珠色のメルの体が、少しずつ夜明け前の大空へと舞い上がる。    三階建ての軒端ほどの高さを保った緑龍が、メルを見下ろしてくる。 「人間(ホムス)の国々の上空を北北東へ向かう。一気に海岸まで飛ぶぞ」 「うんっ」  羽ばたきながら静止して待つネウィルの位置まで上昇しつつ、メルは眼下に立つ母親に声をかける。 「行ってきます、お母さま! 絶対、無事に帰ってくるからっ!」  笑顔の母が、無言で手を振っている。  メルも大きくうなずいて母に応え、北北東へと首を向けた。     
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