第一章 緑衣の騎士への招待状

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 それまで口を閉じていた黒い若者が、ずいとメルローチェの前に進み出た。 「これはこれは」 「ひゃっ!?」  一声上げてのけ反った彼女に構うことなく、この若者は悪戯っぽいトパーズの視線をネウィルに移した。 「こちらの愛らしいご令嬢は、どなたですか? ローサイト卿。“緑龍(グリーンドラゴン)”のあなたとはご昵懇のご様子ですが、どのようなご関係で……」  『愛らしい』などと評されて、思わず顔の火照ったメルローチェ。  おまけに、ネウィルと『ご昵懇』とか『ご関係』とか連発されて、胸のどきどきが止まらない彼女だった。  そんな彼女をよそに、憮然と口元を曲げたネウィルが、突き放したような口調で若者に告げる。 「その方は、メルローチェ=ラ・パンテオン=ロクス殿。中央万神殿(ラ・パンテオン)の書記総長、ロクス殿のご息女だ。今はメルローチェ殿も、中央万神殿の有能な書記の一人。俺の従妹の“白耀龍(パール・ドラゴン)”、だがな」  ネウィルの口ぶりは冷淡だが、言葉は丁寧だ。  名立たる騎士に『メルローチェ殿』などと敬語で呼ばれ、おまけに『有能』とまで言われてしまった。  メルローチェは熱く火照った顔を静かに伏せた。    ネウィルの過分な評価に、何か畏れ多い気分に襲われた彼女だった。     
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