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僕は居ても立ってもいられなくなり、明里さんのスマートフォンに電話をかけてみた。
しかし電話は、いきなり留守番電話に切替わった。
電源が切られているか、電波が届かない所にいるのか。
いったい、どこで何をしているんだ……。
ご機嫌をとるために買ってきた明里さんの大好きな小粒の種無しブドウを冷蔵庫に入れて、僕は嫌な予感を紛らわすため缶ビールを取り出し、テレビをつけた。
チャンネルを変えながらビールを大きく二口飲んで、いつもよく見る報道番組でチャンネルを止めた。
ネクタイをしたアナウンサーが神妙な顔をして原稿を読み上げている。
「連続傷害事件が発生している奈良市で、本日女性の遺体が発見されました」
えっ……。
「遺体は春日山山中に埋められており、散歩中に通りがかった際、男性が連れていた犬が掘り返したため、発見されたとのことです。遺体はまだ新しく死後数日ではないかと推定されています」
不安感が突然その形を変えながら急激に大きく膨らんでいく。
思わずもう一度明里さんに電話をかけたが、また呼出音もないままに留守番電話の音声が流れてきたため、反射的に電話を切った。
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