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プロローグ
部屋に帰るとコーヒーばかり飲んでいる。
そのくせ、その都度一杯ずつ、ペーパードリップする。
何杯分もまとめて淹れることはしない。
とはいっても、かなり大きめのセラミックマグカップを使っているので、一杯分はスタバなんかで見かけるデミカップの倍ほどの量になるだろうか。
ペーパーフィルターに通常の二杯分ほどの豆を入れ、ゆっくりとお湯を垂らしていく。
それこそ、浸透させるような感じで、4、5回にわけて入れる。
豆はマンデリンかグアテマラベースで、お店の深煎りブレンドを選ぶ。
甘味や酸味より苦味重視。それは昔から変わらない。
週末に近所のショップで500gづつ買ってくる。それがちょうど一週間分。
それ以上の量を買うと、飲むまでに日が経ち過ぎてコクが薄くなる・・・気がする。
コーヒーを入れたら、1分待ってから3分で飲み干す。
これが一番美味く飲める温度。
これも昔から変わらない。
それほど、こだわりのある性格ではないつもりだが、コーヒーの飲み方はずっとこうだった。
結局、豆の量も水の量も適当なのだから、いい加減なものだ。
だいたいコーヒーの味なんて、その日の気分や体調でうまいと思える濃さや温度は変わる。
だから自分なりの、うまいと思えるルールがあればいい。
できるだけ、同じように淹れれば自分の体調や気分と向き合う事もできる。
ソファに座り、ゆっくりと黒い液体をすすった。
・・・どうにか間に合った。
明日、ひと月ぶりに休める。
もし休めなければ、月に一度しかない娘とのデートが飛ぶところだった。
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