第二章 野球バカ

2/18
前へ
/433ページ
次へ
   ・・・青春の 想いが巡る   【高校一年・春】  大沢、杉村との出会い。  南洋北高校でこの二人に出会わなければ、俺も親父と似たような人生を送っていたかも知れない。  その意味では、俺の人生を大きく切り開いてくれたのは間違いなく親父だ。    後にプロとなり、ホワイトベアーズの四番バッターとして、何度もリーグ優勝に貢献した大沢秋時。  南洋大のエースとして、弱小だった野球部を日本一に導いた杉村裕海。  俺の青春は、間違いなくこの二人に牽引される形で濃密な日々となった。         高校一年の春、初めて会った時の二人は、まだそんな大それた事を成し遂げるほどの選手には見えなかった。  この時のピッチャー杉村の実力は、俺の足元にも及ばなかっただろうし、バッターとしての大沢も雑なバッティングが目立ち、俺の方が監督に信頼されていたように思う。    俺の投手としての実力は、野球の名門と言われていた南洋北でもそこそこ通用した。  140キロを超えるストレートと、低めにコントロールされたスライダーはすぐに即戦力の評価を得た。  俺は一年の夏から、背番号10をもらい第二投手として何度も登板し、三年生のエース以上の好投を見せた。    それこそ物心つく前から、親父にシゴキ倒されてきた。  そしてそれ以上に自ら努力を惜しまなかった。  俺の活躍は〝そんなこんな〟が一気に開花したような洋々たるものだった。      ・・・そしてたぶん天狗になった。
/433ページ

最初のコメントを投稿しよう!

153人が本棚に入れています
本棚に追加