第二章 野球バカ

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 秋の東海リーグトーナメント。  愛知、岐阜、三重、静岡の県大会三位までの12校で争うトーナメント。  このトーナメントで決勝に進んだ2校が、春の選抜甲子園の出場資格を得る。  各県一位の高校はシードされる。  したがって、2回勝てば甲子園への道が開けるのである。  一回戦をシードされた南洋北校の初戦。  相手は愛知三位の中京大中京。いきなり、全国区との対戦となった。  常に90%の力で投げる事。  俺はとにかく、コントロールだけに神経を集中した。    大沢に言わせれば、140キロのストレートを丁寧にコントロールすれば、高校生ではそうそう打てるものではないと言う。  そして、150キロでもあまい球は高校生でもタイミングを合わす事ができるらしい。  とかく、強打者に対してはリキんでしまうのが、ピッチャーの悲しい(さが)。  だから、強打者にはあまい球が行きやすい。  100%の全力投球でコントロール出来る人間なんて、世の中には存在しないらしい。  ・・・丁寧に、ていねいに。  そして、完投する事。  しっかりとヒロを休ませる事。    俺はとにかく、大沢が構えるミットのポケットだけに意識を集中した。  試合は、大沢が一人で決めてしまった。  三打席連続ホームラン。  相手ピッチャーは、自分の投げる150キロを過信し過ぎた。  大沢に対しては、まるで意地を張っているかのように真っ向からストレートを投げ込んできた。  意地を張った投球は、必ず制球があまくなる。    ~ 150キロでもあまい球は高校生でもタイミングを合わす事ができる ~  大沢は自らの言葉を、自分自身で証明してみせたのだ。    俺のコントロールミスは全部で五個。  その内、三つが長打になり、二つはバッターが打ち損じてくれた。    俺は無四球で九回を投げきった。  被安打7、失点3。  南洋北は愛知の強豪を4対3で退けてしまったのだった。    
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