第二章 野球バカ

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   なにしろ甲子園のかかった一戦。  南洋の怪物を調子付かせたら、手に負えない。  試合を一気に持っていかれる。    カウントが不利になったら歩かせた方がいい。  最初からそういう作戦だったのであろう。  しかし敬遠をするわけではなかった。  あくまで力の限り際どいコースを突く。  それはそれでハイレベルな制球力がないと出来ない芸当だ。    ボール球に手を出してくれれば、まず長打はない。  もし主審がストライクを取ってくれればラッキー。  そんな投球だった。    一回裏、ツーアウト。  大沢は一度しかバットを振らなかった。  3ボール1ストライクからフォアボール。    ツーアウトランナー一塁で、俺の打席。  そんな試合になる。  予感はしていた。    大沢は歩かされる。  俺なら抑えやすい。  だが、俺の調子も悪くはない。  〝一泡食わせてやる〟  俺は気合を入れ直した。  初球。  いきなり大沢が走った。  投球は内角高めのボール球。  キャッチャーの送球は完璧だった。  大沢が頭から滑り込んだ。 「セーフ!」  キャッチャーが悔しそうに天を仰いだ。  大沢の足を見くびるな。  デカいんで、トロそうに見えるが、50Mを5秒台で走る。    ツーアウト二塁。  2球目。  アウトローに入ってきたストレートをぶっ叩いた。  ・・・捉えた!  完璧にミート。  打球はライナーで、センターよりの左中間に飛んでいった。  ・・・よし!先制点だ。  一塁ベースを蹴る瞬間、センターのダイビングが見えた。 「アウト!」  ・・・くそったれ!          
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