第三章 捜査本部

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・・・ ん ? 様々な着信音が、捜査本部室全体に広がった。 メール着信 ……警電に 大半がバイブ音だが、それでも振動パターンが異なれば、それなりのリズムを奏でる。 ん ? ……島から ? 開くと捜査資料が出て来た。 ・・・なるほど 島が本部捜査員全員に捜査資料を送信したようだ。 渡利管理官が説明した事件の概要、その詳細をすべてPDFに纏めたものだった。 ・・・さすがだな 事件の概要。 10月2日、国仲美摘さんは所属するバレーボール部の朝練に参加するために、6時30分頃に自宅を出ている。 松葉北中学までの通学時間は自転車で約20分。 しかしこの日、美摘さんは7時開始の朝練に姿を見せず、始業時刻の8時半になっても教室に現れなかった。 ・・・松葉北中 ? 例の緑地公園の隣にある中学校か ……俺んちの近くだな。 9時5分、美摘さんの無連絡欠席を心配した担任教師が、母親の国仲美彩乃さんの携帯へ電話をして、所在不明が発覚した。 通学中の交通事故を心配した担任が、南洋署の交通部に電話問い合わせをし、母親の美彩乃さんは、すぐに通学路を辿って捜索を始めている。 そして9時40分頃に通学途中にある緑地公園内で、美摘さんの自転車を発見した。 美彩乃さんは、すぐさま110番通報した。 美彩乃さんは、公園内に倒れたまま放置されていた娘の自転車を見て、すぐに “ 連れ去られ ” を確信したらしい。 母親からすると、学校をサボる事などあり得ない性格 ……特に部活動には熱心で、朝練は美摘さんが提案し自らでチームを統率するほどの入れ込みようだった。 さらに美摘さんは “ 美し過ぎる天才セッター ” と題して、秋の新人戦の試合が動画サイトに投稿され、今ちょっとした有名人でもあったそうだ。 だから、母親はすぐに “ 拐われたかも知れない ”と考え、躊躇なく110番通報したのだ。 通報から10分後、2人の地域課の制服警官が国仲邸に到着。 警官は家中を徹底的に調べ回り、緑地公園付近の捜索をくまなく行った上、美彩乃さんから捜索願いを受理し刑事課に引き継いだ。 拉致誘拐もしくは拉致監禁の可能性を視野におき、うちの三班(西口班)が非公開で捜査をしていた事案だったが、明らかに身代金目的のセンは薄く、犯人からの連絡もない為、公開捜査に切り替えると同時に捜査本部を設置した。 ひな壇では、榊原課長が顔を真っ赤にして檄を飛ばしていた。 殿様の手前、必死なのであろう。 ・・・そんな臭い演技してねえで、一刻も早く捜査員を動かせよ その横で捜査資料に目を落としている刑事部長。 やっぱりどこかで会っている ……どこかで会話を交わしている。 ・・・気のせいか ? その真ん前では、島がパソコンと睨めっこしていた。 島はもう仕事を始めているようだ。 巻本刑事部長が顔をあげた。 ・・・また俺を見た だがすぐに目を逸らし、隣に座る殿様に耳打ちを始めた。 殿様がゆっくりと目をあげた。 今度は殿様と目があった。 蓮見警視監が …… 俺を見ている。 何の感情もこもらない、カメラレンズのような無機質な目。 俺も何の感情も込めずに見つめ返した。 正面のプロジェクタ、スクリーンに突然、画像が現れた。 俺は蓮見本部長からスクリーンに目を移した。 国仲美摘さんの顔写真だった。 「さっき、島君がみんなに送った資料の中にも入っている所在不明者の写真だ。こんな美しい少女が拉致、そしてどこかに監禁されているかも知れん。みんなよく見ろよ。そして決して犯人を許すなよ」 榊原課長が捜査員のモチベーションをあげようと、あえて巨大スクリーンに映し出させたようだ。 確かに綺麗な子だ。 とても14歳には見えない。 まるで …… ・・・! えっ ! まさかっ ! ・・・ ああぁぁぁぁ ! ・・・・・・ なんて事だ。 こんなの …… 犯人は …… あいつしか …… まだ …… 今だに …… あいつは …… こんな事をしてたのか。 ・・・ 国仲美摘さんの顔写真 …… 目元 ……鼻筋 ……口許 ……輪郭 ………雰囲気 昔 …… 神宮で見た …… 大学一年の頃の …… 杉村菜都にそっくりだった。
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