第三章 捜査本部

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   思い出した。 間違いない。 巻本は ……あの時のあいつだ。 何度も同じ事を呟きながら、月極駐車場まで一気に走った。 フォレスターに乗り込んで、すぐに駐車場を出た。 行き先は神明町2丁目10。 千葉の住むタワーマンション。 何としても、一刻も早くヤツの部屋へ行かなければ …… そこに国仲美摘さんがいる。 あのクソ野郎に監禁されている。 早速、ナビが着信音を鳴らした。 ・・・ジョーか 20回以上コールが続いたが無視した。 音が止んだ途端、またすぐに鳴る。 ・・・今度は島だ 悪いが出られない。 “ 俺の推理 ” を …… 二人には、是非とも伝えたい。 だが …… 通話やメールは傍受される可能性がある。 俺とのやり取りが、逆に二人を窮地に追い込む事だってあり得る。 敵は何でも可能な殿様なのだ。 さっきから警電も鳴り続けていた。 どうせ袖原か、もしかしたら管理官か ? 突然、捜査本部を抜け出したんだ。 みんな何事だ、と思うだろう。 だが、所詮狂犬。 大して驚きもしないだろう。 職務上の義務違反。 懲戒停職か ? 降任か ? ……免職か ? どうでもいい。 家族や仲間たちの信頼を裏切って千葉正利を襲おうとした。 つい、昨日の事だ。 その愚かさに比べれば、こっちの方が断然マシだ。 ヒロにも大沢にも ……祥華や優深にだって … 少なくとも俺自身は恥じるものではない。 巻本が俺の存在に気づいた。 蓮見も思い出した。 “ 月見酒事件 ” の狂犬を。 おそらく俺はすぐに捜査本部から外される。 外されたら待機組だ。 身動き取れなくなる。 俺の妄想なのか ? 早とちりなのか ? もしかしたら、そうかも知れない。 だが …… 被害者の絶望を思うと …… 俺はもう、自分のカンと贖罪意識に従い …… 突っ走るしかない。 奴らは事件を解決する為に、帳場を立てたのではない。 犯人を隠匿する為に南洋に来たのだ。 巻本はずっとそれをして来たのであろう。 15年以上も前から …… 蓮見健一郎を守るため、千葉洋平の犯罪を隠蔽し続けて来たのだ。 大学3年の冬。 学校の駐車場で会ったあの男。 あの時 …… 俺は森川舞さんの自死の真相を調べる祥華のボディガードをしていた。 それを舞さんの父親の顧問弁護士の秘書を名乗る男に(たしな)められた。 “ 親が断腸の思いで受け入れた事実を、あなた方にほじくり返す権利はありません ” 俺はあっさりと嘘の名刺に騙された。 確か …… “ 久居 ” と名乗った。 あの男が巻本だ。
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