第三章 捜査本部

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  雲ひとつない秋空に、突き刺さる37階の威容。 “ ホワイトステージSINMEI ” 真っ白なタワーを見上げ、俺は途方に暮れていた。 ・・・どうする ? 千葉正利は5年前、最高級と言われたこのマンションを購入した。 特に非公表というわけでもなかったので、その所在地はすぐに分かった。 だからここ5年、同居するヤツ(・・)の動向を見張る為、ここへは何度も足を運んだ。 ここで張っていても何かが獲られるとは思えないが、居場所を知った以上は気になって、時間が空いた時など無意識にここに来るようになっていた。 ジョーが言った通り、それこそが紛れもない “ 贖罪意識 ” なんだろう。 だがヤツの所有するマセラティのスポーツタイプがこのマンションを出入りするのを一度も見ていない。 そもそも20年前のあれ(・・)以来、俺はヤツを一度も見ていなかった。 ほとんど亡霊を追いかけていたようなものだった。 だが今は違う。 ヤツは亡霊なんかじゃない。 20年前の怒りが完全に甦り、俺を衝き動かしていた。 ヤツの部屋に直行するつもりで、衝動的に捜査本部を飛び出して来た。 手帳を使ってでも管理人やコンシェルジュを脅してでもヤツの部屋に突入するつもりだったが …… ここに来て見て目が覚めた。 俺は千葉の住居番号を知らない。 管理人が知っているとも限らない。 知っていても、知らないと言うかも知れない。 そうなると俺は動きがとれない。 この広い巨塔の中で千葉の住居を探し回れるほど、あまいセキュリティではないのだ。 “ ホワイトステージSINMEIのセキュリティ ” で検索してみたら、スマホがその難易度を丁寧に教えてくれた。 まずエントランスは3階にあった。 マンション入口、エントランス、エレベーター、玄関口に4重のカード式オートロック。 エレベーターは住居フロアまで直行する。 さらにテレビモニター付きインターホン。 防犯カメラは敷地内の至る所に設置。 管理人、コンシェルジュ、警備員の常駐。 これでは管理人を脅せば済むという話ではない。 そもそもエントランスにも行き着けないだろう。 どうする ? ・・・ やはり島に頼るしかないか。 島なら何か、方法を見つけるかも知れない。 電話画面を開いた。 着信履歴が並んでいた。 島の名前が上から4番目にあった。 ・・・そうか ! 俺は後ろめたさを噛み砕いて、一番上に表示されている名前をタップした。 ・・・出てくれるか ? コールが …… 一回 ……二回 ……三回 ……四回 ……五回 …… 『・・・タカさん ?』 ・・・出てくれた 「突然、悪いな」 『どうしたの ?』 「・・・トシ、千葉監督のマンションの部屋番号って知らないか ?」 『・・・監督の ? ・・・知らないけど』 「そうか、突然スマン」 『大事な事 ?』 「えっ ? ……まあ」 『誰かに訊いてみるけど ……』 「・・・分かれば ……助かる」 『分かった』 切れていた。 普通に出てくれた。 こんな怪しげな問いかけに対して、すぐに動こうとしてくれた。 妙に嬉しかった。 ん ? 着信 ? トシか ? ・・・ えっ ? ・・・まさか ? すぐに出られなかった。 ・・・ 躊躇する指が何とか通話をタップした。 「・・・水野 ?」 『久しぶり』
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