第三章 捜査本部

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  マンションの住人か。 50歳くらいの婦人がこっちを気にしながら、バッグからカードキーを取り出していた。 不安そうな一瞥を俺に向け、タワーの中に入って行く。 俺はスマホを耳に当てるフリをしながら、入口脇の植え込みの陰に移動した。 確かに俺は普通の人より目立つだろう。 185センチ80キロ。 梨木に言わせると眼つきも悪いらしい。 そんな怪しげな大男が、こんなところでいつまでもウロウロしていると、中から警備員が出て来かねない。 それならそれでちょうどいいか …… 違法捜査。 管理人をわざわざ脅す必要なんてない。 デッチ上げればいい。 フリーのカードキーさえ持っていれば、管理人でなくても、警備員でもコンシェルジュでもいい。 俺は丁寧に警察手帳を提示する。 しっかりと本物の警察官である事を相手に確認させる。 そして ……こう言う。 「捜査の協力をお願いします。先ほど千葉正利氏の家族の方から110番通報がありました。不審者が部屋に侵入しているという通報です。緊急事態ですので大至急33階の千葉さん宅まで案内して下さい」 これでどうだ ? 3303にたどり着けるか ? 躊躇している場合じゃない。 とにかく ……動くしかない。 一秒でも早く。 植え込みの陰から出た。 「下村」 えっ ? 男がマンションの入口を塞ぐように立っていた。 ・・・迫田 ? ・・・が何故 ? 俺を連れ戻しに来たか。 マズいな。 戻されたら …… またヤツが闇に逃げ込む。 迫田は何の感情も表わさず、ただ俺を見ていた。 「どうしてここにサコさんが ?」 迫田に向かって一歩踏み出した瞬間 …… 背中が粟立った。 言いようのない恐怖を感じた。 咄嗟に横に跳んでいた。 石畳にしたたか肩を打ちつけた。 コンクリートの継ぎ目にジャケットが引っかかって袖が裂けた。 ・・・ちっ 路面に這いつくばって、目を向けると巨大な影が覆い被さってきた。 ・・・袖原
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