第三章 捜査本部

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  今のは何なんだ ? 袖原は明らかな敵意 ……殺意の気を放ってきた。 身体が一瞬、恐怖で萎縮した。 195センチの上背、120キロの体重は筋肉の塊。 虎が ……豹を威すようなものなのか。  「恥を掻かせやがって ……」 袖原の丸太のような腕が伸びてきた。 あっと言う間に右腕を取られた。 一気に身体が浮き上がった。 「なっ !」 ・・・なんちゅう力 「いきなり暴力的だな」 見上げる形で袖原を睨みつけた。 「巻本部長から直々に、すぐに連れ戻せって言われた。重大な服務違反という事だ」 「巻本が ?」 小指を巻き込むようにして、ガシッと胸ぐらを掴まれた。 無駄も遠慮もない動き。 「警視長をいきなり呼び捨てか !」 首を締め上げてきた。 「どうして俺がここに来ている事が分かった ?」 袖原は面倒臭さそうな顔をしただけで、何も言わない。 さっき捜査本部を抜け出したばかりの俺を、こんなに早く見つけられるわけがない。 巻本が、袖原と迫田にここで張るように命じた。 つまりは …… ここに被害者がいる。 クソ野郎の部屋に …… 間違いなくいる。 それを階級社会の威力(パワー)で隠そうとしている。 巻本は ……蓮見は、ここに気づいた俺が邪魔なんだ。 俺の推測は間違っていない。 なら …… 絶対に負けられない。 相手が獰猛な虎であろうが …… 「待てっ、蓮見と巻本は …………ぐっ」 さらに締め上げられた。 一気に頸動脈が絞まる。 こめかみの脈動が暴れだした。 話しても無駄 …… 何一つ証拠がない。 ・・・やるしかない 左肘を跳ね上げて、袖原の左腕を弾いた。 頸動脈が開放され、血流が戻った。 「痛てえなあ」 袖原の目が据わった。 「よーし公妨だ。手を上げろ」 そう言って目を細めて腰から手錠を出した。 ・・・公妨(公務執行妨害) ……まさか 俺に手錠をかける気か ? ・・・こんなんで現逮か ? 「何の冗談だ ?」 袖原は口を歪めただけだった。 「両手を上げろ」 こんなん筋モンを署っ引く(しょっぴく)、マル暴のやり方じゃねえか。 クソッ 俺は両掌を袖原に向けて手をあげた。 「パワハラにもほどがある。そこにカメラがあるぞ」 目で防犯カメラの存在を教えてやった。 ・・・さあ、どうする ? 「カメラなんてどうでもいい」 袖原がゆっくりと近づいて来る。 ・・・マジか こんな怪物に捕まったら …… 俺は両手を上げたまま、袖原に歩み寄った。
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