153人が本棚に入れています
本棚に追加
第一章 負け犬
貴 { あした予定通り10時に迎えに行くから
コーヒーを飲みながら、優深にラインを送信した。
あす、月に一度と決められた娘に会える日。
NANYOーTDCのレストランで昼飯を食べて、そのあとショッピングか映画を見るか、そして夜は野球観戦。
最近の定番だ。
優深 { 了解です。仕事は大丈夫ですか?
・・・いつもの事ながら、優深のラインの反応は恐ろしく速い・・・そしていつもの事ながら、相変わらず文面がカタい。スタンプや顔文字なんか見たことない。
貴 { 大丈夫。仕事は無事終わったよ
・・・だからこっちの文面もおかしくなる。
優深 { よかった。あす、すごく楽しみです・・・としくん、出るかな?
俺の甥っ子が今年、ホワイトベアーズに入団した。
しかも高卒ルーキーにしてレギュラーに定着しつつある。
優深は幼い頃から七歳も年上の、その従兄妹によく懐いていて今でも兄妹気分だ。
人見知りの優深が唯一、心を開く相手なのかも知れない。
貴 { ずっと出てるから明日もきっとスタメンさ。
優深 { そうなればすごく嬉しいです。じゃあ明日、楽しみにして待ってます。
・・・ラインの会話を自分から締める・・・カタいだけでなく、クールだ。
これじゃあ業務連絡だな。
とても小学五年の娘とのやりとりとは思えない。
最初のコメントを投稿しよう!