第三章 暴力事件

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第三章 暴力事件

   右肩が悲鳴をあげていた。    ・・・右手が動かない。    完全に麻痺している。    ・・・指先に感覚がない。      ・・・・・・    ・・・しまった。    またソファで寝てしまった。    身体の下敷きになった右腕が、痺れて動かせなかった。  俺は腹筋だけを使って、なんとか上体を起こした。  ・・・。      目の前のローテーブルの上が賑やかだった。     コーヒーカップ。  空になった「魔王」の瓶。  散乱した枝豆のさや。  食べ残しのシューマイと焼き鳥。  何故かロックグラスが携帯の上に乗っている。    さすがにうんざりしてくる。  二日酔いというほどでもないが、後頭部が重い。      ・・・やっぱりもう一杯     ・・・もう一杯だけだ    ・・・ラストの一杯    ・・・ホントのラスト     ・・・これっぱかし残してもしょうがないな  なんてひとりで言い訳しながら結局、空けてしまった。  今さら自己嫌悪、というほどの感情もないが・・・    8時20分。  出かける時間まで、まだ余裕がある。    温度を思いっきりあげて、シャワーを浴びた。  肩を軽く回しながら、右腕を揉む。  少しずつ感覚が戻って来た。  シャワーの温度を少しだけ下げる。  後頭部の疼痛も徐々に消えていくのがわかる。  風呂から出るとすぐに薬缶を火にかけて、コーヒーを入れる準備をした。  冷蔵庫から、スライスしたチェダーチーズと一昨日買った食パンの残りを取り出した。  食パンにチーズを山盛りのせて、トースターで焼く。  チーズが焦げ付くまで、コーヒーをゆっくり淹れながら待つ。  コーヒー、焦げ焦げのチーズトースト、そしてトマトジュース。  ひとりになってからは、朝はほとんど毎日同じもので済ましている。  不思議とこの組み合わせは、まったく飽きない。  パンを齧りながら、次々と新聞を広げた。  一応 三大紙には毎朝ざっと目を通すようにしていた。    パソコンや携帯でばかりニュースを見ていると、自分主体でしか記事を読まなくなる。  小さな事件や小さな事故なんかを見落とす。  小さな事件や地域の様々なトピックスが、意外と捜査に役立つことがあるのだ。  コーヒーを飲み干した。  やはりコーヒーが一番落ち着く。    ・・・!    スポーツ欄を開くと、知った顔が笑っていた。  ・・・千葉正利。  
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